とうとうたらり

〜 清遊漫録・日々徒然 〜

劇場公開作品短評(2024年)

映画館に行くのが好きだったりします。

今年劇場で鑑賞した映画をまとめてみました。

(漏れがあったら追記します。悪しからず。)

 

『哀れなるものたち』ヨルゴス・ランティモス

全体にクラシックな趣が好みでした。こんなにシニカルで乾いた笑いを浴びたのは、久しぶりでした。濡れ場が多くて、ちょっと疲れました。

 

『PERFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース

アパートの室内の撮り方に小津を感じました。自転車を漕ぐ場面にも惹かれました。ただ、制作陣が本気でこういう暮らしに身を投じたいのか、甚だ疑問ではありました。お洒落なトイレも、あまり好みません。

 

『夜明けのすべて』三宅唱

アパートの部屋で散髪するシーンが印象に残っています。みかんを食べながら歩く上白石萌音さんがかわいかったです。男女を色恋ばかりで語らないでほしいよね、とはつねづね思っているところ。丹念に作られた映画でした。

 

『枯れ葉』アキ・カウリスマキ

“ボーイミーツガール”と言ってしまえばそれまでですが、それを噓っぽくも安っぽくも見せないのが作家の技量と思います。おとぎ話のなかに真実を見ました。登場人物が、むっとしているのがいいですね。

 

『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ

巧みな設定と会話劇に、自分に見えている世界がある一面でしかないことを考えさせられました。主人公演じる俳優の演技に、複雑な心情の変化がよく表れていました。

 

オッペンハイマークリストファー・ノーラン

アインシュタインと言葉を交わす水辺でのシーンが印象に残っています。時系列を入れ替える構成が見事でした。苦手なシーンはありましたが、彼のフィルモグラフィーでは最も優れた作品だと思いました。

 

ゴジラxコング 新たなる帝国』アダム・ウィンガード

アメリカ人はコング贔屓なのです、恐らくは。『指輪物語』みたいな流れだなと思っていたら、本当に似ているシーンが出てきました。私は好きでした。

 

『悪は存在しない』濱口竜介

キャメラと対象の間に緊張感がある作品でした。両者の関係にこそ重きを置いた作品と言えます。車中の会話シーンは出色でした。今年イチです。

 

『フュリオサ』ジョージ・ミラー

前作ほどボルテージが上がる要素はなかったものの、復讐劇の物語には非常な強度がありました。フュリオサのお母さんがかっこよかったです。最後もよかったです。

 

『違国日記』瀬田なつき

餃子パーティーや体育館の場面には、見所がありました。高校生たちのほうが上手く撮れていたので、原作者の了承を得て、大きく改編してみてもよかったと思います。

 

『ルックバック』押山清高

作画が“頑張っている”と感じてしまいました。複数で制作したほうがクールな仕上がりになったと思います。音楽もほとんど不要でした。あぜ道を走り出すシーンが素晴らしかったです。

 

インサイド・ヘッド2』ケルシー・マン

前作と比べてライド感が増していて、思春期の心の揺れと呼応するようで面白かったです。欲を言えば、シンパイだけでなくほかの新しい感情たちの活躍も見たかったです。なお、ムカムカ推しです。

 

『きみの色』山田尚子

音楽を心から楽しむ三人の姿が活写されていました。演出の端々に多感な時期を生きる彼女たちへのあたたかく誠実なまなざしを感じて、脚本の瑕も許容できました。

 

『憐れみの3章』ヨルゴス・ランティモス

人間の滑稽味をその実直さから引き出しているようで不愉快でした。万人に薦められる作品ではありませんが、特にも私には合わなかったようです。

 

『Cloud』黒沢清

80年代アメリカ映画の雰囲気でした。ショットのキレが鋭く、アクションシーンにもさすがの臨場感がありました。主人公が初めて撃鉄を上げる場面が、特によかったです。ご都合な脚本ですが、目は瞑れる範囲かと。

 

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』アレックス・ガーランド

時事的な社会状況と戦場ジャーナリズムを扱うには、物語がベタすぎました。戦場カメラマンを追うなら映画のキャメラにも同様の重みがあって然るべきではないかと考えてしまいました。写真が挿入される演出はよかったです。

 

擱筆